「配偶者が相続すると相続税がかからない」と聞いたことはありませんか?正確には、配偶者だからといって自動的に非課税になるわけではなく、一定の控除制度(配偶者控除)によって結果的に相続税がかからないケースがある、ということなのです。
ここでは、配偶者控除の仕組みや適用要件、控除額や計算式について説明していきます。
配偶者控除とは?その目的と対象
相続税法では、配偶者(夫または妻)が相続する財産について、大幅な控除が認められています。これを配偶者控除と呼びます。
- 配偶者は被相続人の財産形成を日常的に支えてきた可能性が高い
- 残された配偶者の老後生活を守るという観点で優遇措置を設けている
配偶者控除は、相続人のなかでも特に配偶者を手厚く保護する仕組みです。財産が一時的に偏っても、連続した相続(子への相続)を考慮して負担を軽減する意義があります。
対象となる配偶者
配偶者控除が適用される「配偶者」とは次の者のことを指します。
- 法的に婚姻関係にある夫婦(婚姻届が受理されていること)
- 内縁関係や事実婚の場合は法律上の配偶者には該当しないため配偶者控除の対象外
- 婚姻期間の長短は問われず正式に結婚していれば控除が適用される
配偶者が相続税ゼロといわれる理由
配偶者控除では、以下のいずれか小さい方が相続税の課税対象から控除されます。
- 1億6,000万円
- 法定相続分相当額
つまり、配偶者が「1億6,000万円まで」または「法定相続分の範囲で」相続する財産であれば、相続税はかからないというのが原則です。「配偶者の相続税負担はゼロである」という表現は、この仕組みを表現したものだといえます。
配偶者控除が適用された場合の具体例
配偶者控除が適用された場合の相続税について、具体的な計算例をみてみましょう。
配偶者がすべての遺産を相続した場合
【例1】
- 配偶者がすべての遺産を相続
- 相続財産総額:1億5,200万円
- 相続税の総額:1億5,200万円×40%-控除額1,700万円=4,380万円
- 各人の納付税額(配偶者控除適用後):0円
※1億6,000万円に収まる金額を相続するため相続税はかからない
配偶者と子が相続する場合
【例2】
- 法定相続人が配偶者+子1人
- 相続財産総額:1億5,200万円
- 法定相続分:配偶者(1/2)7,600万円、子(1/2)7,600万円
- 相続税の速算:配偶者について、7,600万円× 30%-700万円=1,580万円
- 配偶者の納付税額(配偶者控除適用後):0円
※1億6千万円に収まる金額を相続するため相続税はかからない
いずれの場合も、法定相続分や1億6,000万円を超えた金額を配偶者が相続した場合、相続税が発生する可能性があります。
配偶者控除の要件と申告手続き
配偶者控除を適用するには、相続税の申告期限(被相続人の死亡から10か月以内)までに申告書を提出する必要があります。
- 「配偶者だから自動的に非課税」ではなく、必ず申告手続きが前提
- 申告しないと控除を受けられず、後から加算税などが発生する恐れも
申告書への記載と添付書類
具体的には、相続税申告書に「配偶者控除の適用を受ける」旨を記入し、以下のような書類を添付します。
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分割協議がまとまらないときの救済措置
遺産分割協議が期限までに整わない場合でも、申告期限後3年以内の分割見込書を税務署に提出すれば、後日分割が整ったタイミングで配偶者控除を適用できる救済制度があります。
分割見込書とは
分割見込書とは、「なぜ期限内に分割がまとまらなかったのか」という理由を明確に示すとともに、「いつ頃に遺産分割が完了する見込みか」などを記載する書類です。この書類を提出したうえで遺産分割協議を行うことで、「配偶者の税額軽減」の特例を適用することができるようになります。
更正の請求とは
仮に期限内に分割できなかった場合でも、3年以内に解決に至ったのであれば、更正の請求を行うことによって「配偶者の税額軽減」の特例を受けることができます。また、遺産分割調停や審判など時間を要する状況にあったなど、やむを得ないと判断される理由がある場合は、期限を過ぎても特例を適用できる可能性があります。
申告後に遺産分割内容が変わったら?
すでに相続税申告を済ませた後、遺産分割協議書の内容が変更され、配偶者が取得する財産額が増減した場合は、更正の請求を行います。
- 「更正の請求」が認められる期限内(通常、申告期限から5年以内)に、変更後の分割協議書を添付して提出
- 変更で配偶者の相続分が増えれば、さらに相続税が軽減される場合も
期限の管理が重要
協議が長引くと、更正の請求期間を過ぎてしまうおそれもあるため、相続人同士で早めに話し合いをまとめるよう努力しましょう。
配偶者控除以外にもある配偶者優遇策
配偶者控除に加え、配偶者居住権(改正民法で導入)や小規模宅地等の特例など、配偶者を中心とした相続税の優遇は多岐にわたります。
- 小規模宅地等の特例:被相続人が住んでいた宅地を配偶者が相続する際、土地の評価額が80%減になる特例
- 配偶者居住権:配偶者が自宅に住み続けられる権利を確保
これらを組み合わせることで、より大きな相続税圧縮を図れる可能性があります。
まとめ
「配偶者だからすべて非課税」と思い込むと、適用要件や申告手続きを怠る恐れがあり、結果的に課税されるリスクもあります。配偶者だから無条件に非課税となるのではなく、法的根拠にもとづいた特例が「配偶者の税額軽減」なのですから、相続人としてはあらかじめ関連法を読み解いたり相続の専門家に相談したりしてみた方がいいでしょう。
当行政書士法人では、相続税申告書作成や戸籍収集、遺産分割協議書の作成など、相続全般のサポートを行っています。配偶者控除や小規模宅地等の特例を上手に活用すれば、相続税が大幅に軽減される場合もありますので、窓口である行政書士を筆頭に提携する司法書士や税理士の力も借りながら、相続手続をスムーズに完了させていきましょう。
まずは「配偶者控除がどの程度適用されるか」「相続税がいくらになるか分からない」といった疑問を解決するためにも、弊社の無料相談でぜひお気軽にお問い合わせください。










