被相続人(死亡した親など)から相続した財産について課される税金を「相続税」といいます。財産を相続した人すべてに納税義務があるわけではなく、さまざまな控除分を差し引いた財産額が一定額を上回るとき、相続税の申告および納付が必要になるのです。
ここでは、相続税の算出方法と対象財産、税制特例や申告に係るペナルティについて説明していきます。
相続税が課税される条件
遺産の総額が一定の基準(さまざまな控除を差し引いた財産額)を超えない場合、相続税が発生しないため相続人による相続税申告は不要です。
しかし、さまざまな控除を差し引いてもなお遺産額が基礎控除額を超える場合、または超えるかどうか微妙な場合には、相続税申告が必要となります。
相続税の課税対象財産
相続税の課税対象となる財産は4種類に分けることができます。それぞれの財産について概要を確認していきましょう。
1.被相続人が死亡時点で所有していた財産
被相続人名義の財産であれば、財産の所在地が国内か国外かを問わず相続税の課税対象となります。よくみられる相続財産の傾向は以下の通りです。
- 現金・預貯金
- 不動産(土地・建物)
- 株などの有価証券
- その他金銭的価値が認められるすべての財産
2.みなし相続財産
一定額を超える生命保険金(被相続人死亡時に支払われるもの)や死亡退職金は、相続税の課税対象となります。「一定額」とは、死亡保険金や死亡退職金それぞれに対して以下の算式から導き出された金額をいいます。
【みなし相続財産の計算】
- 500万円 × 法定相続人数=非課税金額
- 死亡保険金額ー非課税金額=課税対象額
※死亡保険金額が3,000万円で相続人が3人のとき、非課税金額は「500万円×3人=1,500万円」となるため、課税対象額は「3,000万円ー1,500万円=1,500万円」となります。死亡退職金についても同様に計算し、課税対象額の合計を求めます。
3.相続時精算課税適用財産
相続時精算課税制度とは、60歳以上の親または祖父母から18歳以上の子や孫に対して行われた生前贈与について、総額2,500万円まで特別控除を受けられる制度です。この制度を利用していた場合は、贈与時の価格を相続税課税価格に加えることになっています(持ち戻し)。なお、すでに納めた贈与税分は相続税額から控除されます。
4.相続開始前3年以内に被相続人から得た暦年課税適用財産
被相続人が死亡する前の3年以内に贈与を受けた場合、その財産は相続税の課税対象とみなされます。その場合、基礎控除額は考慮せず、贈与時の価格をそのまま相続税課税価格に加えます。
課税価格を算出する方法
相続税を計算するうえで大切なのは、課税価格を正確に算出することです。以下は主な計算手順です。
- 財産の評価方法
- 土地:路線価図を参考に評価する(国税庁のホームページで確認可能)
- 家屋:死亡時点での固定資産税評価額を基準に計算する
その他の財産:預金、有価証券などの評価方法については、税理士に相談するのが無難です。
- 特殊な財産の注意点
- 名義預金:被相続人が相続人の名義で預金していたものも課税対象になる
- 生前贈与財産:相続開始前7年以内に贈与された財産(みなし相続財産)も課税価格に加算される
- 控除できるもの
- 葬儀費用(お布施含む)
- 被相続人が負担すべき未払金
これらを差し引いた金額が課税価格となります。
課税遺産総額の計算方法
課税価格から基礎控除を差し引いた金額が課税遺産総額です。また、平成27年1月1日の税制改正以降、以下の計算式が適用されています。
- 相続税額の総額=課税遺産総額 × 法定相続分 × 税率 − 控除額
- 各相続人の相続税額=相続税額の総額 × 各相続人の実際の相続割合
※配偶者控除や未成年者控除など、特例が適用されるケースもあります。
基礎控除額 | |
---|---|
平成27年1月1日の改正後の相続 | 3,000万円+(法定相続人の数x600万円) |
改正前の相続 | 5,000万円+(法定相続人の数x1,000万円) |
取得金額 | 改正前 | 改正後 | 控除額(改正後) |
---|---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | 10% | |
1,000万円超〜3,000万円以下 | 15% | 15% | 50万円 |
3,000万円超〜5,000万円以下 | 20% | 20% | 200万円 |
5,000万円超〜1億円以下 | 30% | 30% | 700万円 |
1億円超〜2億円以下 | 40% | 40% | 1,700万円 |
2億円超〜3億円以下 | 40% | 45% | 2,700万円 |
3億円超〜6億円以下 | 50% | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 50% | 55% | 7,200万円 |
【税制特例】小規模宅地等の特例で税額を軽減
小規模宅地等の特例を利用すると、被相続人が居住していた宅地等について、一定の条件下で課税価格が大幅に減額されます。
- 限度面積:330㎡まで
- 減額割合:80%
【計算例】被相続人名義の居住用土地:面積400㎡(評価額8,000万円)の場合
- 8,000万円×80%=6,400万円
- 8,000万円ー6,400万円=1,600万円が相続税評価額
小規模宅地等の特例の注意点
特例を受けるには、相続税の申告期限(相続開始後10か月以内)までに申告が必要です。この期限を過ぎると特例を受けられないので、注意してください。
相続税申告に係るペナルティ
相続税の申告を期限内(10ヶ月)に行わなかった場合、期限となる日の翌日から納付日までについてペナルティを課されますので十分注意しましょう。
延滞税
期限を過ぎてから相続税の申告を行った場合、申告期限の翌日から相続税納付日までの日数に対して延滞税が課せられます。原則として、以下のように段階的に課税されますので正しく計算することが必要です。
- 納期限の翌日から2ヶ月経過するまで:年7.3%か「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い方
- 納期限の翌日から2ヶ月経過後:年14.6%か「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い方
無申告加算税
期限内に申告しなかった場合、次の基準にもとづく無申告加算税が課せられます。
- 税務調査前に自首申告した場合:相続税額に対し5%
- 税務調査の通知を受け調査前に自己申告した場合:相続税額50万円までの部分に対し10%・50万円を超える部分に対し15%
- 税務調査後に申告した場合:相続税額50万円までの部分に対し15%・50万円を超える部分に対し20%
期限から時間が経過したり税務署から通知が来たり、また税務調査を受けたりすると、その分ペナルティの税率も高くなります。期限を過ぎてしまったら、少しでも早く自主的に申告を行い誠意ある対応を見せることが大切です。
相続税で困ったら専門家に相談を
被相続人が死亡してから相続税の申告および納付までの10ヶ月間は、長いようであっという間に過ぎていきます。決して時間的余裕があるわけではないので、スピーディーかつ正確な申告手続きができるよう、専門家に依頼することも検討してみましょう。
当行政書士法人は相続全般について豊かな経験を有していますので、さまざまな相続ケースに対応できるだけでなく、相続税の申告・納付については信頼できる税理士と協力しながら安心のサポートを提供することが可能です。無料相談もご用意しておりますので、ぜひお気軽にご利用ください。