ある相続人が被相続人の療養看護に尽くしたり無償で事業を手伝ったりするなどして被相続人の財産維持・増加に貢献した場合、「特別な寄与」を行ったと認められれば「寄与分」として多く財産を相続できる制度があります。
ここでは、寄与分の権利と寄与が認められる要件について説明していきます。
法で定められた「寄与分」の権利とは
生前の被相続人に対して介護や看護に尽くした相続人の心情としては、被相続人が死亡し相続が開始したときに「これだけ被相続人に尽くしたのだから多く財産を相続したい」と考えても不自然ではないでしょう。
たとえば、何十年にもわたり被相続人の介護を行ってきた相続人とまったく関心を持たず援助もしなかった相続人が同じ相続分しかもらえないとすれば、それは公平とはいえないのかもしれません。しかし、法定相続分にしたがえば決まった分しか財産をもらえないため、遺産分割協議が難航したり、いわゆる争族に発展してしまったりするなど、良くない展開を迎える可能性もあります。
そのような状態を回避し、被相続人に十分尽くした相続人に相応の財産が渡ることを目的として、民法は尽くした相続人に対し「寄与分」を認めているのです。
「寄与」とは貢献を意味しており、相続においては「長期にわたり被相続人に無償で貢献してきたこと」を指しますが、ここでは、寄与分が認められるための条件についてより具体的に説明していきます。
寄与分が認められるための条件
寄与分が認められるためには、被相続人に対して相続人が「特別の寄与」を行った事実があることが重要です。
寄与分が認められる条件 |
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※上記2つの条件に該当する相続人には、寄与分が認められる可能性があります。
寄与分の注意点
被相続人に対する貢献の仕方にもいろいろありますが、「特別の寄与」は「被相続人の財産にプラスの影響を与えたかどうか」で判断されます。
寄与分の注意点 |
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たとえば、「被相続人と同居し生活の面倒をみていた」というだけでは特別な寄与があったとは認められにくく、「ヘルパーも頼まず介護すべてを自分で行った」など、通常期待される程度を越える貢献があった場合は「特別の寄与があった」とみなされる可能性が高くなるようです。
寄与分の主張権者
「特別の寄与」にもとづく「寄与分」が認められるのは、当該行為を行った法定相続人に限られていましたが、令和元年(2019年)の法改正により、法定相続人ではない親族についても「特別寄与料」の請求権利を主張できるようになりました。
第1050条
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
寄与分の主張権者 |
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寄与分の協議が成立しない場合
まずは遺産分割協議によって相続人の相続分について話し合い、そのなかで寄与分を主張することができます。もし、話し合いで寄与分の合意にいたらなかった場合は、家庭裁判所に対して「遺産分割調停」「寄与分を定める処分調停」を申立てることが次の選択肢になってきます。
寄与分の協議が成立しない場合 |
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なお、特別寄与料については、主張を行う親族と相続人とで話し合って決定します。話し合いがまとまれば裁判所での手続きは不要です。どうしても話がまとまらない場合は、家庭裁判所に対して「特別の寄与に関する処分調停」を申し立てることができます。
まとめ
寄与分の主張には根拠・証拠が欠かせませんので、日頃から日記をつけたり領収証などを取っておいたりすることが大切です。
相続は、被相続人およびその親族の関係性によって個々に性格が大きく変わるものだといえます。寄与分・特別寄与分について話し合いがスムーズに進むかどうかも、親族間のコミュニケーションの在り方が大きく影響するとも考えられます。
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