相続手続きとその流れ

相続とは、被相続人(亡くなった人)の財産を相続人が引き継ぐ手続きのことをいいます。被相続人の死亡により開始する相続手続きの在り方はまさに十人十色ですから、正しく適切な手続きを行うためには、相続人の協力体制が整っていることが必要です。

 

どの時点から相続の実務に着手すべきか、という点も非常に大事です。相続手続きには期限が設けられたものもあるため、できるだけ速やかに行動開始すべきでしょう。家族としては心が落ち着いてから取り組みたいのが実情と考えられますが、手続きは待ってはくれません。できるだけ早く取り組みを開始し期限に間に合わせることが重要です。

 

遺言があれば家庭裁判所による検認の手続きが必要ですし、遺言がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行わなければいけません。相続人に認知症など判断能力がない人がいる場合などは速やかに成年後見人制度を利用することも必要になってくるでしょう。

「死後事務」も忘れずに

相続は必ず進めなければいけない手続きですが、それとは別に、被相続人に関わる死後事務手続きへの対処も必要です。

 

被相続人が年金受給者だった場合は、年金の種類によって死亡日から10日以内か14日以内に「年金受給停止手続き」を行わなければなりません。この手続きを怠った場合、受給者本人が死亡しているにも関わらず年金が振り込まれ続けることになるため、後に還付が求められ別途手続きが発生します。

 

被相続人が賃貸住宅で独居生活をしていた場合は、相続人あるいは関係者が賃貸住宅のオーナーや管理会社に本人の死亡を通知したうえで家賃清算などを行い、また余計な費用がかからないようにできるだけ早く各種ライフラインの解約手続きを進める必要もあります。クレジットカードや携帯電話などの解約も行わなければなりません。

 

生前に本人が死後事務委任契約を締結していた場合は、指定された死後事務を受任者が責任をもって遂行することになります

相続手続きの主な流れ

相続手続きはどのような順序で何を行っていけばいいのでしょうか。下記一覧図で全体像を把握してみましょう。

相続の流れ

相続の流れ図PDFファイル(プリントできます)

 

遺言書の有無の確認

先に述べた通り、被相続人の死後速やかに確認すべき事柄の筆頭に挙げられるのが、「遺言書の有無の確認です。

 

公証役場で作成する「公正証書遺言」であれば、遺言の有無について公証役場に問い合わせることができます。当行政書士法人でも「公正証書遺言の存在有無確認手続き」を代行できますので、ご希望の場合はぜひご相談ください。また、被相続人が生前に貸金庫を利用していた場合は、貸金庫内に遺言書を保管している可能性もあります。合わせて確認する必要があるでしょう。

 

被相続人が自筆で作成した自筆証書遺言あるいは秘密証書遺言を残していた場合は、勝手に開封せず、家庭裁判所に申立てを行い検認手続きを受ける必要があります。検認手続きにあたり法定相続人全員が呼び出されますが、出頭については申立人を除き任意となります。

 

遺言書があった場合の手続き

遺言書があった場合は、遺言書の種類に応じて以下の手続きを行います。

【自筆証書遺言】家庭裁判所に対して検認申立てを行う
【公正証書遺言】検認不要のためそのまま相続手続きを開始する
【秘密証書遺言】家庭裁判所に対して検認申立てを行う

 

遺言書がなかった場合の手続き

被相続人名義の遺産の種類や金額を明確にするために「財産目録」を作成します。財産調査を行い一覧を作る必要があります。

 

なお、遺言書があった場合でも、遺産詳細の記載がないか不十分であれば、同じく財産調査を進めて財産目録を作成します。

 

戸籍取得と相続関係説明図の作成

財産調査と同時進行で進めなければならないのが、戸籍取得です。法定相続人が誰で合計何人いるのかを明確にするために行います。役所で「被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍」を取得しましょう。

 

戸籍を収集し法定相続人が明らかにできたら、次に「相続関係説明図」を作成し、被相続人と相続人の関係性をわかりやすく整理します。相続関係説明図は相続登記を始めとするさまざまな相続手続きの添付書類として必要になります。

 

相続または相続放棄の意思決定

法定相続人は、相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかの手続きをしなければなりません。単純承認と限定承認はいずれも被相続人の財産を引き継ぐ意思表示で、相続放棄はすべての財産の相続をしない意思表示です。

 

  • 単純承認:プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続する
  • 限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産も相続する
  • 相続放棄:プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄する

 

もし、3ヶ月以内(熟慮期間)に相続するかどうかの意思決定ができない場合は、家庭裁判所に対して「熟慮期間伸長の申立て」を行うことにより、通常1ヶ月から3ヶ月程度の延長が認められる可能性があります。

 

【時系列】相続手続きの流れ

被相続人が死亡したら、まず遺言書の有無をしっかり確認します。遺言書がある場合、遺言書が遺産分割協議に優先しますので、遺言書にもとづいて相続手続きを進めましょう。遺言書がない場合は、法定相続人全員が集まって遺産分割協議を行い、どのように遺産分割するかを話し合い決定します。

 

なお、遺言書があったとしても、遺産分割協議ですべての相続人が同意し遺言執行者の選任もない場合は、遺言書によらず遺産分割協議でどの財産を誰がどのくらい相続するかを決めることが可能です。

◆遺産分割協議の開始

   ↓

◆遺産分割協議の内容が整ったら遺産分割協議書を作成

   ↓

◆相続手続きの実行(名義変更手続き・相続登記・債務弁済・預貯金の分配など)

   ↓

◆被相続人が生前に確定申告をしていた場合は相続開始から4ヶ月以内に準確定申告を実施

   ↓

◆相続開始から10か月以内にすべての相続手続きを完了し相続税を納付

※相続税が発生しない場合は申告の必要なし

※相続税が発生する場合はできるだけ税理士や税務署といった専門家の力を借りながら申告することが勧められる

相続手続きにかかる時間は、遺産の種類や規模、相続人の人数や関係性などが大きく影響するため、短期で完了するケースもあれば長期間を要するケースもあります。一般的には3ヶ月程度で相続手続きを済ませることが多いようです。相続手続きはとても煩雑で専門的知識が求められる場面も多いので、お困りの方はぜひ当行政書士法人の無料相談もご利用ください。

 

相続開始に伴う行政手続きやサービス解約手続きなど

相続手続きに伴い、行政手続きやサービスの解約手続きが必要になってきます。一般的に、以下に挙げる手続きを行うことが多いといえます。

 

【葬儀前】

  • 臓器提供意思カードの有無確認(葬儀前に要確認)
  • 献体登録の有無確認(葬儀前に要確認)

 

【行政手続き】

  • 死亡届(死亡から7日以内)→火葬・埋葬許可証の受取
  • 世帯主変更届(死亡から14日以内)
  • 姻族関係終了届(被相続人方の親族との関係を終了させたい場合のみ)
  • 復氏届(婚姻前の氏に戻す場合のみ)
  • 子の氏の変更許可申立て(必要に応じ家庭裁判所に申立て)
  • 高額療養費の申請(自己負担限度額を超えた分について申請)
  • 葬祭費また埋葬料の受給手続き
  • 遺族年金の手続き(年金事務所) など

 

【各種サービス解約など】

  • 施設退所および費用清算
  • 医療費精算
  • 水道・電気・ガスなどのライフライン解約
  • インターネット解約
  • クレジットカード解約
  • 携帯電話解約
  • 生命保険金・医療保険金の請求
  • 新聞解約 など

 

上記は死後の手続きの一部であり、このほかにもさまざまな手続きが必要になってきます。死後の手続きについて生前から備えておきたい場合は、当行政書士法人にて死後事務委任契約のご相談を承ります。ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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