相続に関する用語集です。相続情報を理解するために参考にしてください。
相続関連用語集 | ||||
嫡出子 | 非嫡出子 | 認知 | 養子縁組 | 後見・保佐・補助 |
任意後見制度 | 相続 | 相続回復請求権 | 相続人 | 代襲相続 |
相続欠格 | 相続廃除 | 包括承継 | 相続財産 | 一身専属権 |
祭祀財産 | 共同相続 | 相続分 | 遺産の分割 | 寄与分 |
相続の承認 | 単純承認 | 限定承認 | 相続放棄 | 相続人不存在 |
嫡出子
嫡出子とは、法律上の婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子を指します。この嫡出子は、さらに「推定される嫡出子」と「推定されない嫡出子」に分類されます。
改正前の民法第772条では、妻が婚姻中に懐胎した子については、夫の子であると推定すると定めていました。具体的には、婚姻成立から200日以降、または婚姻解消後300日以内に生まれた子は「婚姻中に懐胎された」と見なされ、これを「推定される嫡出子」としていたのです。しかし、令和6年(2024年)4月1日に施行された改正民法によって嫡出推定制度が変わり、離婚後300日以内に生まれた子どもであっても、出産の時点で母親が再婚していれば、新しい夫の子どもであると推定されることになりました。
一方、この期間外に生まれた子は「推定されない嫡出子」となります。
非嫡出子
非嫡出子とは、法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子を指します。母子関係は出産という事実によって自動的に成立しますが、父子関係については父親が認知を行わない限り、法律上の関係は認められません。ただし、非嫡出子であっても認知されていれば、相続権が発生します。その際の法定相続分は嫡出子(実子)と同じです。
認知
婚姻していない男女間に生まれた子を「自分の子である」と認め意思表示することを認知といいます。認知には、父親である男性が自らの意思で認知する「任意認知」と、任意認知しない父親たる男性に対し母子が認知を求めて裁判所に訴えを起こし強制的に認めさせる「強制認知」の2種類があります。
養子縁組(普通養子縁組)
養子縁組とは、親子関係にない者同士を「法律上の親子」として結びつけ親子関係に至らせる契約のことをいいます。養子縁組により成立した親子関係では、各々を養親と養子とよびます。
民法第809条により、養親と養子の間には法定血族関係が発生するため、養親が死亡した際、養子は法定相続人となります。また、養子縁組を行った後も、養子は実の両親の法定相続人であることに変わりはありません。ただし、特別養子縁組を行った場合は、実親子関係および実親族関係はそこで終了する点に注意しましょう。
後見・保佐・補助
任意後見と法定後見の2種類に分かれる後見制度のうち、法定後見制度はさらに「後見」「保佐」「補助」の3つに細分化され、被後見人の判断能力の程度に応じていずれかの制度を利用することができます。法定後見制度では成年後見人・保佐人・補助人を家庭裁判所が選任し、被後見人の身上監護(看護や療養、生活維持などに関する支援、法律行為の代理など)や財産管理(被後見人の財産上の利益保護など)を行います。
任意後見制度
任意後見制度とは、本人の判断能力が不十分になる前に、将来に備えて自ら選んだ任意後見人と任意後見契約を締結し、自らの生活維持や療養看護、財産管理などの業務に関する代理権を与えるものです。任意後見契約は公正証書で締結する必要があります。本人の判断能力が著しく低下したとみなされた場合、本人または配偶者もしくは任意後見受任者等からの請求を受けて、家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、これをもって任意後見人は代理権を取得することになります。
相続
民法において、相続は次のように定めています。
- 第882条:相続は被相続人の死亡により開始する
- 第896条:相続開始の時点から相続人は被相続人の財産に関する権利義務を承継する
つまり、被相続人が死亡した瞬間に、被相続人の一身専属権を除くすべての財産に係る権利義務をすべての相続人が相続することになるのです。
相続回復請求権
相続回復請求権とは、相続財産を占有している相続人以外の者(表見相続人)から侵害されている財産を取り戻すために、正当な相続人がその身分を主張して侵害を排除し、占有あるいは支配されている相続財産の回復を請求する権利のことをいいます。相続回復請求権の行使は本来の相続人(真正相続人)に認められています。
相続人
相続人とは、被相続人の財産などを引き継ぐ者を指しています。民法では相続順位が定められており、それぞれの順位にある者は次の通りです。
【常に相続人】配偶者
配偶者は常に相続人となりますが、内縁関係者は相続人になることはできません。
【第1順位】被相続人の子
嫡出子・非嫡出子ともに相続人となります。また、養子は実子と等しい相続権利を有しますので第1順位です。
【第2順位】被相続人の直系尊属
直系尊属とは、両親や祖父母など、被相続人の先祖にあたる人々を指します。直系尊属は、被相続人に子供がいない場合に限り、相続人として認められます。また、直系尊属の中では、親等が近い人から相続することになります。例えば、父母と祖父母が健在の場合、相続人は父母のみとなります。
【第3順位】被相続人の兄弟姉妹
もし被相続人に子供や直系尊属がいない場合、相続人は兄弟姉妹になります。さらに、兄弟姉妹の中でも、両親が異なる場合は、その相続分が異なります。通常、父母の両方を同じくする兄弟姉妹と比べて、片方のみの兄弟姉妹の相続分は半分になります
代襲相続
代襲相続は、相続人が相続開始前に死亡した場合、その子が代わりに相続人となる制度です。しかし、直系尊属や配偶者には代襲相続は認められません。
相続欠格
相続欠格とは、被相続人に対して重大な不正行為を行った者が相続権を失うことを意味します。具体的には、故意に被相続人を死亡させた者や、詐欺や強迫によって遺言を変更させた者などが該当します。相続欠格に該当する者の子供は、代襲相続を受けることができます。
【相続欠格事由)】
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
※e-Govより抜粋
相続廃除
相続廃除とは、被相続人が推定相続人に対して虐待や重大な侮辱を行った場合に、その者を相続人から除外する手続きです。廃除された者の子供は代襲相続を受けることができます。
包括承継
相続が開始すると、被相続人に属していたすべての権利や義務が相続人に継承されます。これを包括承継といいます。ただし、一身専属権は含まれません。
相続財産
相続財産とは、被相続人(亡くなった人)の所有していた一切の財産と権利義務を指します。これには、物理的な財産だけでなく、無体財産や債務も含まれます。
相続財産には、以下のようなものが含まれます:
- 物権:所有権、地上権、抵当権、質権、占有権など。
- 債権:売買契約、贈与契約、消費貸借契約、賃貸借契約、請負契約に基づく権利。
- 無体財産権:著作権、特許権など。
- 社員権などの権利。
また、相続財産には被相続人が負っていた債務も含まれます。これには金銭債務をはじめ、売主としての担保責任、不法行為に基づく損害賠償責任、契約解除・取り消しに関連する地位なども含まれ、相続人が承継します。
ただし、相続対象となるのは一身専属権を除いた権利義務です。一身専属権とは、その人個人にしか帰属しない権利や義務で、相続人には引き継がれません。
一身専属権
一身専属権とは、特定の個人にのみ帰属する権利であり、その人自身でなければ行使できない権利を指します。つまり、これらの権利は相続人には引き継がれません。相続においては、被相続人の一身に専属する権利義務は相続対象外となります。
一身専属権に該当する代表的な権利義務には、次のようなものがあります:
- 個人間の信用に基づく代理権:特定の信頼関係に基づいた代理行為。
- 雇用契約に基づく労働義務:被相続人が従事していた仕事や雇用契約に基づく義務。
- 委任契約に基づく事務処理の義務:被相続人が委任された業務を遂行するための義務。
- 親権や扶養請求権:親族間での扶養義務や親権など、身分に関する権利。
これらの権利や義務は、相続の対象にはならず、個人の意思や状況に基づいてのみ行使可能です。相続人が引き継げないため、相続における権利・義務の範囲を正しく理解することが重要です。
祭祀財産
祭祀財産とは、祖先を祀るための財産を指します。これには系譜や祭具、墓地などが含まれます。祭祀財産は特別財産として、相続財産とは異なる扱いを受け、祖先の祭祀を主宰する者に承継されます。
共同相続
共同相続とは、複数の相続人が協力して相続を行う形態を指します。相続人が一人しかいない場合は「単独相続」となりますが、相続人が二人以上いる場合、相続財産は遺産分割が行われるまで、共同相続人全員の共有財産となります。具体的には、相続人が二人以上の場合、相続財産は各相続人の持分として共有され、その後、遺産分割協議を経て、各相続人に分配されることになります。この遺産分割の過程では、遺言があればそれに従って分割され、遺言がない場合は法定相続分に従うことが基本です。
このように、共同相続は相続人間で財産の分割を行うプロセスが必要であり、その際には遺産分割協議を通じて公平な分け方を決めることが重要です。
相続分
相続分とは、同順位の相続人が複数いる場合に、各相続人が遺産全体に対して相続できる割合のことを指します。相続分は、被相続人の遺言により定められることもあります。遺言で相続分を指定したり、その決定を第三者に委託したりすることができます(民法第902条)。ただし、遺言による相続分指定が遺留分を侵害する場合、遺留分権利者は遺留分確保のために遺留分侵害額請求を行うことができます。
相続分が指定されていない場合、相続分は法定相続分に従って分配されます(民法第900条)。以下は、法定相続分に基づく相続の割合です:
- 子と配偶者が相続人の場合:子と配偶者はそれぞれ相続分の半分(1/2)を受け取ります。
- 配偶者と直系尊属(親や祖父母)が相続人の場合:配偶者は相続分の3分の2(2/3)、直系尊属は3分の1(1/3)を相続します。
- 配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合:配偶者は相続分の4分の3(3/4)、兄弟姉妹は4分の1(1/4)を相続します。
- 子、直系尊属、兄弟姉妹が複数いる場合:相続分は均等に分配されます。ただし、父母の一方を共通にする兄弟姉妹の相続分は、父母両方を共通にする兄弟姉妹の半分となります。
遺産の分割
遺産分割とは、共同相続人が各自の相続分に応じて遺産を分ける手続きを指します。共同相続の場合、遺産は遺産分割が完了するまで共有状態となりますが、基本的に相続人はいつでも遺産分割を他の相続人に請求することができます。ただし、被相続人が遺言で相続開始後5年間の遺産分割を禁止している場合、その期間中は分割を行うことができません。
遺産分割にあたっては、遺産に含まれる物や権利の種類、性質、相続人の年齢や職業、心身の状態、生活状況など、あらゆる事情を考慮して行われます(民法第906条)。さらに、遺産分割が行われた場合、その効力は相続開始時にさかのぼり、分割された権利や義務は相続が開始された時点から各相続人に帰属します。
寄与分
寄与分は、遺産分割時に、被相続人の事業活動や財産の維持・増加に特別な貢献をした相続人に対して、通常の相続分を超えて与えられる追加の遺産額のことを指します。具体的には、被相続人の事業に対する労務提供、財産の給付、療養看護、またはその他の方法による財産の維持・増加に貢献した場合に認められます。
寄与分が認められるためには、貢献が「特別」である必要があります。例えば、通常の扶養義務の範囲内で行われた貢献は寄与分として認められません。そのため、寄与分の請求には、具体的な証拠や状況の説明が求められることがあります。
相続の承認
相続が開始されると、相続人は相続を承認するか放棄するかを選ぶことができます。相続の承認とは、相続を受け入れる意思表示のことを指します。承認には、被相続人の土地や権利、借金などのすべての財産を引き継ぐ「単純承認」と、被相続人の債務を相続財産の範囲内で負担し、残りの財産を承継する「限定承認」の2つがあります。また、相続の承認または放棄の手続きは、相続の開始を知った日から原則3ヶ月以内に行う必要があります。
単純承認
単純承認とは、被相続人の権利と義務を全面的に承継することを意味します。特別な手続きは不要で、相続開始を知った日から3カ月以内に、限定承認や相続放棄の手続きを取らずに時間が過ぎると、自動的に単純承認をしたものとみなされます。さらに、相続財産を無断で処分したり、相続放棄や限定承認後に財産を隠したりした場合も、単純承認を選んだものと見なされるので注意が必要です。
限定承認
限定承認は、相続財産の範囲内でのみ被相続人の債務や遺贈を弁済し、残余の財産があればそれを承継する方法です。この手続きは、共同相続人全員が一致して行う必要があり、相続開始を知った日から3カ月以内に、財産目録を作成して家庭裁判所に申述しなければなりません。限定承認を選択することで、債務超過などのリスクを避けることができます。
相続放棄
相続放棄は、相続財産のすべてを放棄することを意味します。放棄を希望する場合、家庭裁判所に申述しなければなりません。相続開始前には放棄はできませんが、相続開始後に放棄を行うことで、その相続人は最初から相続人ではなかったものと見なされ、相続分は他の共同相続人に分配されます。もし共同相続人がいない場合、後順位の相続人がその分を承継します。また、相続放棄をした場合には代襲相続が認められず、放棄した者の子供が相続人になることはありません。
相続人不存在
相続人がいない場合、相続財産は一時的に独立した法人、いわゆる「相続財産法人」として扱われます。家庭裁判所は、利害関係者の申立てを受けて相続財産清算人を選任し、その旨を公告します。清算人は、被相続人の債務を支払うなどして相続財産の清算を進めます。この過程では、相続人を捜索するための公告が行われ、その期間が終了した時点で相続人の不在が確定します。
相続人が確認できなかった場合、相続財産は最終的に国庫に帰属することになります。ただし、特別な事情がある場合、例えば故人と特別な関係があった者(特別縁故者)に対して、相続財産が分与されることもあります。