相続人がいない、あるいは相続人全員が相続放棄した場合、遺産を管理する人が存在しない状態となるため、家庭裁判所に申立てを行い「相続財産清算人」を選任する手続きが必要です。

 

相続財産清算人は相続人の捜索・債権者への公告・債務の弁済・残余財産の処理まで一連の清算業務を担いますが、手続きは通常の相続とは大きく異なり、一般の方が単独で進めることは非常に困難です。

 

当事務所でもこれまでに司法書士事務所との連携のもと10件程度のサポート実績があります。

 

相続人がいない場合の「相続財産法人」という仕組み

相続人が存在しない場合や全員が相続放棄した場合、財産を引き継ぐ人がいなくなり、特別な法的手続きが必要になります。

 

法律では、相続人の有無が明らかでない場合に備え、相続財産を特別な法人(相続財産法人)として扱う仕組みが設けられています財産そのものに法人格を与えることで、被相続人の遺産の保存や債務処理を適切に行えるようにする制度です。

 

この相続財産法人を管理・清算するために、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任します。なお、かつては「相続財産管理人」と呼ばれていた制度です。

 

相続財産清算人には通常「弁護士」が選任される

相続財産清算人の業務は専門性が高く、場合によっては競売手続きや多数の債権者・債務者が関係することもあります。このため、家庭裁判所の判断により弁護士が選任されるケースがほとんどです。当事務所が関与したサポート事例においても、いずれも弁護士が選任されています。

 

Q.後から相続人が見つかった場合、それまでの手続きはどうなりますか?

A.相続財産法人は成立しなかったものとして扱われますが、清算人が行った行為の効力は維持されます。

相続人の存在が後から判明した場合、相続財産法人はさかのぼって不成立となりますが、それまでに相続財産清算人が行った保存・管理・処分行為の効力は有効なまま維持されます。

 

相続財産清算人の選任が必要になる2つのケース

相続財産清算人の選任が必要となる場面を確認しておきましょう。

 

ケース|法定相続人が存在しない場合

被相続人に配偶者・子・親・兄弟姉妹などの法定相続人が一人もいない場合遺産を管理する者がいないため相続財産清算人の選任が必要です。天涯孤独の状態で亡くなったケースなどがこれに当たります。

 

法定相続人が全くいない方には、当事務所では遺言書の作成を強くお勧めしています。遺言がなければ承継先がないまま相続人不存在となってしまいます。

 

ケース|相続人全員が相続放棄した場合

相続人がいても全員が相続放棄した場合、結果として相続人がいない状態となります。

 

相続放棄をした人は初めから相続人ではなかったものとみなされるため、相続人不存在として相続財産清算人の選任手続きが必要になります当事務所でも、相続放棄手続きの段階から全員が放棄して相続人が不存在になったケースを経験しています。

 

Q.遺言で全財産を遺贈する相手がいる場合も「相続人不存在」として扱われますか?

A.扱われません。

相続人がおらず遺産をすべて受遺者が受け取る場合、最高裁判所は「相続人の不存在には該当しない」との判断を示しています。また、相続人の所在が不明な場合は相続人不存在の問題ではなく、不在者の財産管理の問題として扱われます。

 

相続財産清算人が行う3つの主要業務

相続財産清算人は、遺産の管理から最終的な処理まで幅広い業務を担います。

 

業務|相続人の捜索公告(6か月以上)

相続権を持つ可能性のある人物に名乗り出る機会を与えるため、官報に相続人の捜索公告を行います。この公告期間は6か月以上必要とされており、見落としていた相続人がいないかを公に確認します。官報への掲載は官報販売所などへの申込みにより手続きが取られます。

 

業務|債権者・受遺者への公告と債務の弁済(2か月以上)

被相続人に対して債権を持つ人や、遺言によって財産を受け取る人がいる場合は、2か月以上の公告期間を設けて一定期間内に申し出るよう官報に公告します。申し出があった場合は相続財産から債務を弁済します。

 

業務|残余財産の処理

すべての債務処理が終わったあとに残った財産は、被相続人と生前に特別な関係があった特別縁故者」に分与される場合があります。該当する人物がいない場合は、最終的に国庫に帰属します。

 

なお、単に被相続人の面倒を見ていた・一時的に同居していただけでは「特別縁故者」とは認められない点に注意が必要です。特別縁故者として認定されるためには、被相続人との間に特別な縁故関係があったことが必要です。特別縁故者の審理が行われる場合は、国庫帰属までの期間がさらに長くなります。

 

相続財産清算人の選任申立て

相続財産清算人は自動的に選ばれるわけではなく、家庭裁判所への申立てが必要です。

 

申立てができる人

家庭裁判所に申立てができるのは、利害関係人(被相続人の債権者・特定遺贈を受けた者・特別縁故者など)または検察官とされています。

 

なお、「債権者もおらず誰も手を挙げないとき」に検察官が対応してくれるかについて、当事務所でも検察に確認したことがありますが、よっぽどの公益的な理由がない限り対応はしてもらえないようです。この点については法律の専門家である弁護士にも相談して慎重に検討されることをお勧めします。

 

主な必要書類

  • 申立書
  • 被相続人の出生から死亡までの全戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の父母・子・兄弟姉妹など関係者の戸籍謄本(必要に応じて)
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 不動産登記事項証明書・預貯金残高証明書など財産を示す資料
  • 利害関係を証明する資料(債権者の場合は金銭消費貸借契約書写しなど)
  • 清算人候補者がいる場合はその者の住民票または戸籍附票

 

戸籍収集の手間と時間

相続人の不存在を証明するためには、戸籍の収集範囲が非常に広くなります。 被相続人だけでなく、その親や兄弟姉妹が存在した場合、それらの人物の生まれてから死亡までの戸籍もすべて収集しなければなりません。これが手続きの中でも特に手間のかかる作業となります。

 

当事務所では戸籍調査・財産調査の代行業務を行っており、その他の家庭裁判所提出書類は弁護士・司法書士との連携のもとすべて揃えます。ご依頼から書類が整うまでおおよそ3か月程度を目安にしていただいていますが、ケースによってはさらに時間がかかることもあります。

 

予納金の負担に注意

相続財産清算人の報酬を確保するため、家庭裁判所から申立人に対して報酬予納を求められることがあります。被相続人に財産がそれほどない場合はほぼ確実に、預金や現金が少ない場合にも予納金の納付が要請されます。

 

最終的に遺産から清算人報酬が賄われた場合は申立人に還付されます。なお、遺産が少なく予納金の負担ができないため、申立て自体を断念されるケースもあります。

 

Q.相続財産清算人の候補者を自分で指定することはできますか?

A.候補者を申立書に記載することはできますが、選任するかどうかは家庭裁判所が決定します。

申立て時に候補者の住民票等を添付して希望を伝えることは可能ですが、最終的な選任権限は裁判所にあり、希望通りになるとは限りません。実務上は弁護士が選任されるケースが多くなっています。

 

相続財産清算人が必要なケースは早めの専門家相談を

相続人が存在しない場合や全員が相続放棄した場合、遺産を管理する者がいない状態が続くと財産管理が滞り、関係者に不利益が生じるリスクがあります。相続財産清算人の選任申立ては、広範囲の戸籍収集・予納金の準備・複数の公告手続きなど、通常の相続手続きとは大きく異なる複雑な手続きです。

 

当事務所へのご相談を見ると、「相続人が不存在だが被相続人の面倒を見てきた」という方や、「相続人全員が相続放棄して、残された遺産の管理をどうすべきか」というご相談が多い傾向にあります。まずは自分のケースがどの手続きに該当するかを専門家に確認することが、最も確実な第一歩です。

 

当事務所では、戸籍調査・財産調査の代行から相続財産清算人の選任申立てに必要な書類作成まで、弁護士・司法書士と連携したワンストップのサポート体制を整えております。「相続人がいない」「全員が相続放棄した後の手続きが不安」という方は、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

 

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