相続が発生すると、被相続人(故人)名義の金融機関口座が凍結され、取引が一時的に停止されます。この「口座凍結」によって、遺族は預金の引き出しや引き落としの処理ができなくなり、葬儀代や生活費などに支障をきたすことがあります。
ここでは、口座凍結の概要と解除手続き、仮払い制度について説明していきます。
口座凍結とは?
金融機関が口座名義人の死亡を確認した時点で、その名義の口座は凍結されます。凍結中は、以下のような取引が一切できなくなります。
入出金が停止される
故人名義の口座からお金を引き出すことはできず、賃料収入や配当金の振り込みなども受け取れなくなります。特に葬儀費用や医療費の精算が急務の場合、現金の用意に困ることがあります。
口座引き落としが停止される
凍結に伴い、電気・ガス・水道といった公共料金や、クレジットカード代金などの自動引き落としも中断されます。この状態を放置すると、遅延によるサービス停止や信用情報への影響が懸念されます。
凍結口座の解除手続き
口座凍結を解除するには、金融機関に必要書類を提出し、所定の手続きを行う必要があります。手続きの流れと必要書類を詳しく見ていきましょう。
必要書類一覧
以下は、凍結解除手続きに一般的に必要とされる書類です。
遺言書や遺産分割協議書がない場合
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- 被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本
- 法定相続人全員の印鑑証明書
- 通帳、証書、キャッシュカードなど
遺言書がある場合
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- 遺言書原本(自筆証書遺言・秘密証書遺言は家庭裁判所の検認証明書も必要)
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 資産受取人の印鑑証明書
遺産分割協議書がある場合
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- 遺産分割協議書原本
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 法定相続人全員の印鑑証明書
- 通帳や証書、キャッシュカードなど
手続きのポイント
金融機関ごとに要求される書類が異なる場合があるため、必ず事前に窓口や問い合わせで確認してください。また、原則として、必要書類は金融機関の窓口で提出します。郵送対応が可能な場合もありますが、直接訪問した方が迅速に対応してもらえるケースが多いです。
仮払い制度の活用
凍結口座の解除手続きが完了するまでには、一定の時間がかかります。しかし、急な出費が必要な場合に備え、2019年の民法改正により設けられた「仮払い制度」を利用することができます。
仮払い制度とは?
相続人が金融機関に申請することで、一定金額の預貯金を引き出せる制度です。
仮払い制度の概要
- 対象となる預貯金
すべての金融機関に預けられた預貯金が対象となります。
- 引き出し可能な金額
預貯金残高の3分の1以内、または150万円のいずれか低い額が上限です。
申請に必要な書類
- 相続人全員の同意書
- 被相続人の戸籍謄本
- 相続人自身の戸籍謄本や住民票
- 金融機関所定の申請書
注意点
仮払い制度を利用した金額は、最終的な遺産分割協議において相続財産の一部として扱われます。そのため、相続人間での合意が得られている場合に利用することをお勧めします。
亡くなった人の口座を放置した場合
相続が発生した際、故人名義の口座が凍結され、金融機関への手続きを行わないまま放置すると「休眠預金」として扱われる可能性があります。この状態が続くと最終的に預金が消滅する恐れがあるため、速やかな対応が求められます。
放置による休眠預金化と消滅のリスク
金融機関が口座の最終取引から10年が経過すると、その口座は「休眠預金」とされ、さらに10年経つと消滅時効を迎えます。
休眠預金等活用法(2018年施行)の定めでは、以下のように休眠預金の手続きが進められていきます。
1.金融機関からの通知と公告
最終取引から9年経過後、残高1万円以上の口座について預金者へ通知し、休眠預金への移管について公告します。2.休眠預金の移管
公告後、手続きがなされない場合、預金は預金保険機構へ移管され、民間公益活動に活用されます。この時点で預金者の請求権は消滅します。3.再請求の可能性
一定の手続きにより、休眠預金等代替金の請求が可能ですが、手続きの放置は大きなリスクを伴います。
凍結口座の解除と仮払い制度
被相続人の死亡後、口座凍結が解除されるまで通常2週間ほどかかります。しかし、次のような理由で迅速な出金が必要になる場合があります。
- 葬儀費用や医療費の支払い
- 故人の借入金返済
- 生活費の捻出
このようなときは、「仮払い制度」を利用して、急な出費に備えることが大事です。この制度では、一部の相続人による手続きで預金を引き出すことが可能です。
【仮払い制度の上限額】
- 計算式: 預貯金残高 × 法定相続分 × 1/3
- 上限額: 最大150万円
※計算結果と150万円のうち低い方が上限額となります。
例:
預金残高300万円、相続人が2人(法定相続分1/2ずつ)の場合:
300万円 × 1/2 × 1/3 = 50万円(上限)
仮払い制度の必要書類
仮払い制度の手続きには、次の書類が一般的に必要です。
- 金融機関指定の申請書
- 故人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 払戻金を受け取る相続人の実印
※金融機関によって異なる場合があるため、事前の確認が重要です。
ゆうちょ銀行での相続手続きの流れ
ゆうちょ銀行の手続きを例に挙げてみましょう。公式サイトによれば、次の流れで手続きが進むとされています。
- 相続確認表を提出
- 必要書類の案内を受領
- 書類を用意して窓口へ提出
- 約1~2週間で代表相続人の口座に払戻金が入金
まとめ
故人の口座凍結を放置することは、預金の消滅リスクを高めます。煩雑な手続きが必要な場合も多いため、早めの対応と専門家の活用が重要です。
当社では、相続手続きの豊富な経験を活かし、相続全般に関するご相談・ご依頼を承っています。初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。口座凍結問題をスムーズに解決し、大切な財産を守りましょう。










