家族の死後、遺産をめぐる相続手続きを進めようとしたものの、一部の相続人が連絡にまったく応じない、あるいは協議自体を無視しているというケースは、意外にも珍しくありません。しかし、連絡を無視している相続人がいるからといって、他の相続人だけで協議を強行に成立させることはできず、さまざまな弊害が生じます。
ここでは、相続人の一部が遺産分割協議を無視したまま放置するとどのようなデメリットがあるか、どのような対応策があるかについて説明していきます。
相続人の一部が遺産分割協議を無視する理由
遺産分割協議は、すべての相続人が参加しないと成立しません。誰か一人でも連絡に応じないまま無視を続けたり、協議への出席を拒否したりすると、協議自体が進まないのが原則です。では、そもそもなぜ無視する相続人が出てくるのでしょうか。考えられる理由を整理してみます。
1.会ったことのない相続人(前妻の子など)がいる
被相続人に離婚歴があり、前妻(前夫)との間に子供がいた場合、その子供は法定相続人になる可能性があります。しかし、その相続人が被相続人とまったく面識がないことも珍しくありません。親族関係もほとんど断絶していると、「連絡が来ても他人事」「煩わしいだけ」などの理由から、意図的に無視されるケースが考えられます。
2.親族間の仲が悪い・希薄すぎる
たとえば嫁姑トラブルや親族同士の不仲が原因で、遺産分割協議の声かけに応じてくれないことがあります。長年のわだかまりや険悪な関係が背景にあると、協議のテーブルにつくこと自体を拒む可能性が高まります。
3.長期間の音信不通
そもそも数年~数十年にわたって消息不明であったり、住所変更が把握されていなかったりする相続人がいるケースもあります。この場合、いくら連絡を試みても応答がなければ協議を成立させられません。最終的には家庭裁判所での調停や失踪宣告の手続きを検討する必要があるでしょう。
無視する相続人がいることによるリスク
相続人の一部が遺産分割協議を無視していると、残された相続人たちには多大な不利益が及びます。いったいどのような問題が起こるのか、具体例を見てみましょう。
「不動産の共有状態が続き活用できない」
相続財産に不動産が含まれる場合、遺産分割協議を経て名義を確定しないかぎり、その不動産は「共有」のままです。
- 不動産を売却するにも、賃貸住宅として活用するにも、すべての共有者の同意が必要
- 無視を続ける相続人がいる限り、合意形成が不可能
その結果、相続不動産は固定資産税だけが延々とかかり、売却も活用もできないまま塩漬け状態に陥る可能性が高まります。
「共有者の一部が勝手に持分を売却する可能性がある」
なかなか遺産分割協議が進まないことにしびれを切らした別の相続人が、自分の共有持分だけを第三者に売却してしまうリスクも否定できません。見ず知らずの人が共有者として登場し、さらにトラブルが拡大するケースも想定されます。
「金融機関の払戻しに支障が出る」
被相続人に預貯金などの金融資産がある場合、遺産分割協議書の作成ができないと全額の払戻しを受けることが難しくなる場合があります。葬儀費用や相続税納付のための資金を動かせず、相続人たちが一時的に立て替えるなどの負担を強いられるかもしれません。
「相続税軽減特例が使えず高額納税になる」
相続税の計算上、小規模宅地特例や配偶者控除など、軽減措置を受けるためには遺産分割協議が前提となるものが多いです。協議が成立しなければ特例が使えず、相続税納付の期限(10ヶ月)までに高額な税金を納めざるを得なくなります。
遺産相続の連絡を無視されるとき対処法
相続人の誰かが連絡に応じず、協議を進めることができないときは、放置せず法律の専門家に早めに相談しましょう。以下のような対処法が考えられます。
家庭裁判所での遺産分割調停・審判を利用する
無視されている場合でも、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てれば、調停委員の仲介によって協議を強制的に進められます。調停でも不成立なら、最終的に審判によって裁判所が遺産の分け方を決定します。
失踪宣告の手続き(消息不明の場合)を行う
相続人が長期にわたって消息不明で、「生死不明」状態になっているなら、失踪宣告を検討します。家庭裁判所に申し立てて、所定の期間(普通失踪:7年、生死不明)を経過したと判断されれば、法律上は死亡したものとして扱われるため、相続人から外れる可能性があります。
まとめ
遺産分割協議を無視する相続人がいると、下記のような大きなデメリットが発生し得ます。
- 不動産の共有が解消できず、売却・活用ができない
- 共有者が持分だけを勝手に売却するリスク
- 金融資産の払戻しに制限がかかる
- 相続税の軽減特例を受けられず、高額納税となる場合がある
こうしたリスクを避けるには、専門家のサポートを受け、家庭裁判所の調停・審判や失踪宣告などを適切なタイミングで検討することが大切です。
無視し続ける相続人がいるからといって、放置すれば状況はますますこじれるばかりです。法律と現行の制度を正しく理解し、最適な対処法を選んで行動することで、相続手続きを円滑に進めるよう試みてみましょう。
当行政書士法人では、必要に応じて弁護士と連携を図りながら、現状に合わせた解決策を明確にしていきます。ぜひお気軽に無料相談をご利用ください。










