家族や兄弟、親類がいないため、自分の死後の財産管理や処理をどうしたらいいか思案している人もいるかもしれません。相続人がいない状況を「相続人不存在」とよび、相続においては通常とは異なる特別な手続きを踏む必要があります。
ここでは、相続人不存在である場合の財産管理や処分に係る手続きについて説明していきます。
相続人不存在とは?
相続人不存在とは、被相続人が死亡した時点で法定相続人が一人もいない、または相続人が相続放棄し財産を相続する者が誰もいなくなった状態を指します。
【具体例】
身寄りのない高齢者が亡くなったが、配偶者や子供、親族がすでに全員死亡している。あるいは相続人が法定相続人として存在していたが、全員が相続放棄を行い、誰も相続を継がない状態となった。など
相続人のいない財産は最終的に国へ帰属
通常、相続人が存在する場合は、遺産分割協議などを経て財産が相続人へ引き継がれます。しかし、相続人不存在では最終的に財産が国庫に帰属する仕組みになっています。ただし、国庫に帰属させる前に一定の手続きや公告が必要であり、その間に特別縁故者が名乗り出て財産を受け取る可能性もあります。
相続財産管理人の選任と財産管理・処分手続き
相続人がいない場合、以下の手順で財産管理・処分の手続きが進められます。
1.相続財産管理人の選任
被相続人の遺産を保全・管理し、必要な処分を行うため、家庭裁判所に申立てを行い相続財産管理人を選任してもらいます。申立人は、被相続人と利害関係にある人物か検察官に限られます。
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2.相続人捜索の公告
相続財産管理人は、相続人を見つけるために「相続人捜索の公告」を行います。官報などで「この人が亡くなりました。相続人の方は名乗り出てください」という旨を一定期間(6か月以上)掲載し、本当に相続人がいないかどうかを確認します。
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3.債権申出の公告
被相続人が生前に借金などの債務を抱えていた可能性もあるため、債権者を捜索する公告も行われます。
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4.相続人不在の確定
相続人捜索の公告期間が過ぎても誰も名乗り出ず、相続人がいないことが確定すると、正式に「相続人不存在」が認定されます。家庭裁判所が相続人不存在を確定する裁判を行うことにより、次の段階である「特別縁故者への財産分与」や「国庫帰属の手続き」を進めることができるようになります。
5.特別縁故者への財産分与
相続人はいなくても、被相続人と特別な縁故がある人物がいれば、その人が財産の一部または全部を受け取れる制度があります。
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6.国庫帰属
特別縁故者がいない場合または申立てが認められない場合、相続財産は国庫へ帰属します。相続財産管理人は残った財産を国に引き渡し、管理人報酬などの費用を差し引いた上で最終手続きを完了します。
「特別縁故者」ってどんな人?
先に例として挙げた特別縁故者について、それぞれ以下のような理由から特別縁故者として認められる可能性があります。
【長期間同居していた友人】法律上の親族ではなくとも被相続人と整形を同じくしていた場合
【事実婚の相手方】正式な婚姻関係にはないが夫婦同然の共同生活を営んでいた場合
【被相続人の介護や看護を献身的に行っていた人】ヘルパーや施設職員など報酬を得て介護に従事していた者を除き、家族同様に献身的に介護・看護を行っていた場合
【その他】被相続人と特別な関係にあったと認められる場合
特別縁故者として財産を受け取るには?
特別縁故者が財産を受け取るためには、家庭裁判所への申立てと審査が必要です。
- 申立て期限:相続人不存在が確定した後、一定の期間内(通常3か月以内)
- 審査の要点:被相続人との具体的な関係性、同居や看護の実態、生活上の援助の有無など
- 審査結果:認められれば、相続人いない遺産の一部または全部を分与される
相続人不在の場合の注意点
相続人不存在の状況である場合、通常の相続よりも、被相続人の財産管理・処分の手続きに時間がかかる点に留意しましょう。
たとえば「相続財産管理人の選任、複数回の公告、債権者対応」など手順が多いこと、特別縁故者の申立てや審査も含めると1年以上かかる場合もあることなど、手間も時間もかかることが想定されます。
財産管理の費用負担
相続財産管理人への報酬や公告費用など、財産管理にかかる費用は、基本的に遺産の中から支払われます。結果的に、特別縁故者が財産を受け取るときには残余財産が減っている可能性があります。
遺言書などの事前対策が重要
もし「相続人がいないかもしれない」「自分の死後、どうなるかわからない」といった懸念がある場合は、生前に遺言書を作成しておくか家族信託などの制度を利用して財産の行き先を明確にしておくと、手続きの手間や不安が少なくなるでしょう。
まとめ
相続人がいない場合、次の順序で「相続人不存在における遺産管理・処分」の手続きが行われていきます。
- 相続財産管理人の選任
- 相続人・債権者捜索の公告
- 相続人不在の確定
- 特別縁故者への財産分与
- 国庫帰属
相続人が不存在であるからすぐに財産が国庫に帰するわけではなく、特別縁故者がいる場合には財産を受け取る道が用意されているのです。
ただし、この一連の手続きには時間と費用がかかるうえ、裁判所や法律に関する専門知識を要する場面も多々あります。もし相続人がいない可能性がある、または特別縁故者として財産を受け取りたいと考えている場合は、早めに専門家へ相談するのが得策です。
当行政書士法人では、相続人不存在や特別縁故者の手続きに関するご相談を受け付けております。家庭裁判所に対する申立てや申述を必要とする手続きがあることから、信頼できる司法書士あるいは弁護士をご紹介するなどして、ご依頼者様が不安に陥らないよう必要に応じて総合的・個別的なサポートを提供しています。ぜひ無料相談をご利用いただき、現在抱えておられるお悩みをお聞かせください。










