相続と聞くと、お金や土地、建物といったプラスの財産をイメージする方が多いかもしれません。しかし、相続にはローンが残る不動産や借金などのマイナス財産も含まれる場合があります。もし、プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合、全てを相続するのは大きな負担となる可能性があります。そんなときに有効な手段が「相続放棄」です。
相続放棄とは
相続放棄とは、相続人としての権利を放棄し、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がない選択肢です。この手続きを行うことで、法的に「最初から相続人ではなかった」とみなされます。特に、マイナス財産が多い場合、相続放棄を選ぶことが賢明な判断となるケースが多々見受けられます。
相続放棄のメリット
相続放棄することで、以下のようなメリットを得ることができます。相続放棄するとプラスの財産も放棄することにはなりますが、それ以上に利点が大きい場合があるのも事実です。
マイナス財産の回避
借金やローンなど、マイナス財産の負担を避けることができます。
トラブル回避
他の相続人との財産分配の争いを防ぐことができます。
手続きが比較的簡単
必要な書類を揃え、家庭裁判所に申請することで手続きを進められます。
相続放棄の手続き方法
相続放棄するには、家庭裁判所に対して「相続の放棄の申述」を行う必要があります。手続きに必要な書類や窓口、費用について確認しておきましょう。
相続放棄手続きの流れ
相続放棄手続きの大まかな流れは以下のとおりです。
- 財産調査
- 必要書類の収集
- 家庭裁判所への申立
- 照会書への回答
- 相続放棄申述受理通知書の受領
以下でそれぞれのステップを詳しく見ていきましょう。
財産調査|プラス・マイナス両方を早急に確認
相続放棄を検討するときは、まず被相続人にどのような財産がどれだけ存在するかを把握する必要があります。相続放棄の申立期限は3ヶ月しかないので、下記のような優先的に調べる項目をリストアップし、スピード感をもって進めましょう。
- 金融機関での残高確認:通帳への記帳や残高証明書の発行で、預金残高をチェック
- 不動産の状況:固定資産税課税証明書や登記簿謄本を取り寄せて価値や担保設定を確認
- 信用情報機関への開示請求:被相続人が借金をしていないか、ローンやクレジット情報を調べる
- 貴金属・骨董品など:専門店での査定や相場のチェック
- 郵便物・メール:請求書やネット口座の取引履歴で負債や契約が判明することも
こうした情報をもとに、プラスとマイナス財産のバランスを見極め、「相続放棄が最善なのか」を判断するのが望ましいです。
必要書類の収集|家庭裁判所に提出する書類一覧
相続放棄を申立てるには、家庭裁判所に以下の書類を提出します(裁判所HPでも確認可能)。
- 相続放棄の申述書
- 裁判所の窓口やウェブサイトからダウンロード
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 被相続人が死亡した事実、最後の住所を確認するため
- 申述人(相続放棄する人)の戸籍謄本
- 申述人が法定相続人であることを証明
さらに、相続人の順位(配偶者・子、代襲相続人、父母など)や家庭状況によって、被相続人の戸籍謄本一式や申述人の代襲関係を示す書類などが必要になる場合もあるので、該当する書類をよく確認しましょう。
家庭裁判所への申立
必要書類が揃ったら、相続放棄の申立書を記入し、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。提出方法は、窓口に持参か郵送が一般的です。
- 書類不備や印鑑ミスなどがないよう注意
- 受付後、担当者から書類の確認・質疑応答がある場合も
照会書の確認と返送
申立後、家庭裁判所から「照会書・回答書」が郵送されてきます。この照会書では、
- あなたは本当に放棄する意思があるのか
- 単純承認に該当する事情(すでに財産処分してしまったなど)はないか
などを再確認します。回答内容を記入し、期限内に返送しましょう。
相続放棄申述受理通知書の受領で完了
照会書の回答後、裁判所により正式に相続放棄が認められると、「相続放棄申述受理通知書」が届きます。これが届けば、相続放棄手続きは完了です。
- 大切に保管しておくこと
- 自治体や金融機関などで手続きする際に提出を求められる場合もあり
相続放棄における注意点
相続放棄をすればマイナスの財産を含めたすべての財産を相続せずに済みますが、次のような注意点もあります。いずれも大切なポイントですので十分注意して手続きに臨みましょう。
期限に注意
相続放棄は、被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に手続きを行う必要があります。
未成年者の相続放棄
未成年者が相続放棄をする場合、法定代理人(親権者など)が手続きを行います。
また、法定代理人と未成年者が相続人の場合は、別途、特別代理人の選任が必要です。
相続開始前には放棄できない
相続放棄の手続きは、被相続人の死亡後に開始される相続手続きから可能です。
相続放棄の具体例
たとえば、被相続人が借金を多く抱えていた場合、相続放棄を選ぶことでその負担を引き継がずに済みます。ただし、相続人全員が相続放棄を選んだ場合、次の順位の相続人に権利が移るため、家族間で相談しながら進めることが重要です。
相続放棄を検討する際は専門家に相談を
相続放棄を選ぶかどうかの判断には、財産の調査や法律の知識が必要です。専門家に相談することで、最適な選択ができるようになるでしょう。行政書士や司法書士など専門家に相談し、安心して手続きを進めましょう。










